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豊川稲荷に来たぞ

。これ以上、考えたらヘットが痛くなるだけだ。やめたー)

豊川稲荷は正しくは、曹洞宗円福寺・豊川閣、妙厳寺本尊は「千手観音菩薩」である。山門に「ダキ二天」が祀られて居るので、現世利益がある稲荷様の親分である「ダキ二天」信仰が盛んになり、寺内には多くの建造物が建てられている。

また、東海道札所十七番である不動尊も祀られている。

事実、現世利益が与えられる所で、現在では「豊川高校」があり、一年間の寮生活をして、葬式のやり方を覚えると正式な「坊主」に成れるのである。

だから、ご尤も顔で、葬儀や法事で厳しい顔をしている坊主の中には、豊川高校を卒業して、一年で坊主になったインスタント坊主も居るのである。

さて、権造である。清水港で次郎長ドンから、お説教をされて、少しは渡世人らしく自分に厳しく旅を続けて居るだろうか?

「さあ、半は手止まりだ。丁から十三両ないか・十三両ないか」

ここは稲荷一家の豊川稲荷境内で高市(たかまち)が立っているので、賭場が設えてある。

渡世人は博徒である。権造は博徒である。懐には旅に出るに付き親分から。預かった金が未だ、七十両も残っていた。

デイラー(中盆)の声に誘われるように、権造は賭場に入ると盆茣蓙の縦に座った。盆茣蓙の縦に座るのは、貫禄のある親分か又は、大きな金を張るものであるという博徒の不文律がある。

何の心算でいるのだろう。権造は、縦盆に座った。前に駒札を五十両程、置いている。

デイラーの再三の呼び込みに権造は、誘われるようにして丁から、十五両の駒札を貼った。

権造が、駒を併せたのでデイラーは、勝負の開始を客に告げた。

「はいっ、駒が併いました。盆中手止まりです。さあ、勝負だ!」

デイラーが壷を上げるとサイコロは、五の目と三の目が出た。丁である。権造はニッコリ笑うと上目を使い盆の廻りに座る客を睨みまわした。

概ね、足りない駒を併せると目が出る事は、少ないのだが、権造は、文殊院一家に居る時は、デイラーはするが、博打を張り取りする事はなかった。

実は今勝った目も、五・三即ち、権・さん・である。だが、連(つら)同じ目に連続して出る目も、抜け(ぬけ)交互に目が出る一番一番丁と半が交代に出る目も、その原理は賭博を開帳しながら、デイラーをして、博徒として体で覚えていた。

稲荷一家のデイラー(中盆)が、権造に聞いた。

「盆中仁義失礼にござんすが、勝負が勝ちに出た目の縁起が良い所で、失礼をいたします。手前、豊川一円を縄張りにしている稲荷一家親分稲荷弧次郎の若い者で、中盆を務めております。今田尾介というちんけな者でございます。そちら様は、縄張りもちの親方と存じますが、一体何処のお人でござんすか」

「ワシは武州・野原文殊院一家の大里の貸元をお勤めている内島権造でござんす。通称・兜山の権造と言うけちな野郎です。今日後、万端宜しくお願いをいたします」

まともな、仁義にはなっていないが、渡世人同士の意志の疎通は、取れたのだから、作者は眼を瞑ることにする。

一刻(二時間)ばかり、賭場で遊んだ権造が、盆茣蓙から腰を上げた時は、四十五両の勝駒札を持っていた。貸元が座っている帳場に行くと、稲荷一家の貸元が弧次郎が、権造に声をかけた。

「武州の文殊院の大里の貸元だってねー、武州の渡世人は博打が達者だ。どうだい。今夜はオイラの家に泊まり、若い者に博打のノウハウを教えてくれないかい。権造親方」

「折角のご好意ではありますが、訳のある旅ですゆえ、厄介になるのは御面こうむります」

清水の次郎長から、お説教をされてからは、権造は同業者に一宿一飯の厄介になれば、金が掛らなくて遊びもでき得なのはわかるが、次郎長のような、ブルドックみたいな親方が、何処のいるか判らないし、義理を背負うことになり、厄介になっている時、出入りでもあれば助っ人をしなければならない。それが渡世だからしょうがないのは権造もヨークわかるが、この度の旅は、越前の国永平寺へ親分燿山の代理で大前田の大親分の病回復の祈願と言う事が先決で、無事に、この旅を終わらせることが出来たら、きっと大里の貸元に、親分がしてくれると確信を持っている。

旅が終わったら、成るであろう貸元である。この旅でもむやみやたらに、女を抱き武州文殊院一家の兜山の権造は、スケベ親方だと言われたくないのである。

だが、権造から女を取るのは、鬼から金棒を取る様なもの、権造にはきつかった。

だが、今日は違う。親分から旅の費用にと預かった百両の金も、今まで遣った分と遊ぶ金まで博打で稼いだのである。

権造が足りない頭で単純計算をして見ても、百十五両もある。自分の金が十五両もある。博打で稼いだ自分の金だから、女を買おうが何を仕様が、ワシ次第だと権造は考えている。女遊びだって、普通の旅人の様に、宿場の女郎を一晩買って翌朝、素知らぬ顔をして又、旅立てば良いという考えに至った。

*(豊川稲荷には、狐芸者と言う女たちが居ると聞いている。今夜はその狐芸者に、化かされてみようじゃねぇーか、桜吹雪が綺麗だなー)

権造の豊川稲荷から帰る背中に桜の花びらが舞い散り、少し猫背に歩く権造の姿は、年季が入った渡世人の粋さが醸しだされていた。

旅籠も豊川稲荷参りの客で賑わっていた。権造が通ると自然に、人がよけてくれる。権造が放っているオーラが、そうさせているのか、人相が恐ろしいから何かをされると困るからだから、判らないが権造は、自分の渡世人としての貫禄がそうさせていると思い込んでいる。

店の暖簾名は「狐狸庵」という粋な店名が付いていた。暖簾を押して、出てきた番頭に権造は言った。

「今夜一晩厄介になりますよ。番頭さん。おおそうだ、これを一人付けてくれないかい」

権造は小指を立てて番頭に示した。

「お客さん。お好みは如何様な子が、良いのでしょうか」

「ワシは女には疎いので女に良い悪いがわからないから、番頭さん任せます。これは宿泊代と別に番頭さんに上げますから、宜しく頼みますね」

堅気の隠居爺の振りをして、権造は一分銀を一枚番頭に握らせた。番頭は銀を受け取ると大きく頷いて権造にウインクをした。

如何せん。現世利益を歌っている豊川稲荷である。門前町である宿場の旅籠も、皆、現世利益を求めて、化かし合いをしているのである。

ゆっくりと風呂に入り、旅の垢を落として夕食の前の一杯を権造はやっていた。銚子を三本開けたときである。

「ごめんくださりなりませ。ここはご隠居のお部屋ですか」

「いいともじゃねぇーそうだとも!」

権造はワクワクして弧芸者を待っていた。来た弧芸者は武蔵野国鉢形の「薬問屋・美千代屋」のおかみさんで、女相撲の美千代川の番頭で薬の飲みすぎで弧の様に細く痩せている芸者である。

(幾ら、弧芸者だって、これじゃポン中じゃねー頓服中ではねーか、オッパイなんかねーのじゃねーか・・・)

権造の冷たく覚めた目を感じた弧芸者は、眼に眼一杯媚を込めて秋波を送ってきた。

(このくそ爺、わちきを、好みではねーな。一発化かしてメロメロにしてやるから・・・)

「わちきは、弧芸者のポン田だよ。ご隠居今夜は良い気持ちにさせてやるからね」

旅中、良い女ばかり遊んできた。権造は、女に対して眼が少し肥えてきた。口先ばかりの女であると思った時、いくなりポン田は、権造のまたぐらにコケタ頬の顔を寄せ薄い唇で行動開始し始めた。

「うっ、うっ、うっ、こりゃ気分がいいぜよ」

化け猫が行灯の油を舐めるように権造のジュニアの首周りをねっとりした唾を出して嘗め回した。冷たく覚めていた権造であるが、ジュニアは正直である。マッチではないが、さりげなくギンギラギンに成ってしまった。

*(好みじゃねーが、ジュニアが、これじゃーどうしょうもない。馬には添ってみろ、人には乗ってみろと言う言葉を昔、親分から聞き多用な気がする。この痩せた頓服中毒のよーな、弧芸者のポン田を抱いてみよう・・・)

と思った時は既に。ポン田を畳の上に押し倒して、馬乗りになっていた。ギンギラギンに成っているジュニアをポン田の馬鹿貝に、押し当てるとすーとは入ってゆかず、貝の襞だがジュニアのヘットに当たり権造は痺れた。

「おうっ、おうっ、いいっ。いいっ、うわー」

権造は一差しで、ポン田の虜になってしまった。

(うふふふふふふふふーはまったな。爺・ふふふふふふ・・・・)

嵌ったという弧芸者の性技に嵌ったのか、貝に嵌ったのか判らないが、権造は全身快感に襲われていながら、ポン田が呟いているのを聞いた。

四技を痺れさせながら一発目が、フニュシュとなり、ポン田が、精液で塗れている権造のジュニアをぺろぺろ舐めているとジュニアは又、マッチになってしまった。

権造が次ぎは、バックからやろうとポン田の後ろへ廻った。弧芸者であるだけに、バックからやるのが正位なのだろう。ポン田は、甚く喜んで、痩せコケタお尻を振り振りしながら、長い首を後ろに向かせ権造の顔を長い舌で舐め始めた。

再度、元気になったジュニアをポン田の貝に差し込んで、権造は気合を入れて愛の行為を続けた。

「あっ、ほれほれ・あっ、ほれほれ、いいな、いいな、いいじゃんか・・・・・」

ポン田は眼を充血させて、愛おしげに権像を見ている。何分続いたのか何秒続いたのか判らないが、権造」とポン田の二発目は終わった。

こうして、二人の性交は朝まで続くのである。

権造が自分で覚えている回数はもうわからない。朦朧として半気絶状態になっていた。

周囲が明るくなってきたので、周りを見渡すと野原の中である。

「おやっ、俺は旅籠に泊まったわけだけど、ここは旅籠ではない。可笑しいな」

そこへ一人の百姓が、鍬を肩に担いでやってきた。

「旅の人何をしているのじゃ、褌がと取れているぞえ」

「旅籠へ泊まったわけだが、朝起きたらこんな所に、居る自分が、わからないのさ」

「自分がわからないのは、誰でも一緒だ!自分が何者であるかが判ったという事は悟りである」

「でもよー、話は違うがワシは、小綺麗な「狐狸庵」という旅籠へ泊まったのだ。なんでここに居るのだろう」

「馬鹿者!狐狸庵という言葉をよく理解してみろ!」

「??????????????????????・きつねとたぬきか、じゃーワシは化かされたというのか」

「かーつ・気づいたな。愚か者」

この百姓は豊川稲荷の円副寺の首座である万増和尚である。毎日豊川稲荷の鎮守の森で必ず狐に化かされて、ジュニアをだして、朝歩いている旅人が居るので百姓の格好をして見回っているのである。

円副寺の万増禅寺作者が歴史を調べてみたが、何処にも記録されていなかった。僕は思う・万空禅寺こそ弧の親玉で、ダキ二天ではなかったのではないかと。

 

 

 

 

*尾張で終わらない権造の旅

尾張名古屋は、優秀な武将を多く生んでいる。織田信長を始め豊臣秀吉・福島正則などである。

尾張名古屋のお堀端で、天主を感慨深いような顔をしてながめている一人の男がいた。

武州野原文殊院一家の兄いである兜山の権造である。

時は、安土桃山時代権造が、甲賀の万空(まんから)と呼ばれ大泥棒の石川五衛門の筆頭子分であった時に、この尾張の城の「金の鯱」を親分である石川五右衛門と盗み出そうとして、捕縛され京の三条河原で万空(権造)は打ち首親分である石川五衛門は、釜茹での刑に処せられてしまったのである。

どうして、権造が自分の前世を知っているかというと、越前永平寺で命を捨てて修行をした現在の権造の親分である文殊院の燿山が、修行の果てに、身につけた天眼通で、権造の過去を見抜いたのである。だから権造は自分の親分とは、他の子分とは違う紐帯で結ばれていると自負をしているのである。

その様な過去のある尾張の城である。

ノータリンの権造とて感慨深く、ならざるは得ない。

(ワシの親分だった石川五衛門様はスゲー人だった。豊臣秀吉などあのスケベ猿と何時も言っていた。そうそう、本来なら俺が、信長公の跡を継いで天下を掌握できるは筈であったと言っていたな。あの気宇の有大さは、天下に類がない英雄だ。その生まれ変わりの文殊院の燿山親分は、こんなワシでも越前の永平寺まで代参の旅に出してくれる。加山雄三ではないが、僕は幸福だなー、おっと、間違ってしまったワシは幸福だなー)

「そこにいる。見るからに、渡世人と思えるご仁、熱田の神社で賭場が立っている気があるなら、オイラについてきてくれないかい」

権造に声をかけたのは尾張名古屋でその名も高い鹿島一家の三下奴で、「駆け落ちの杉」と言う女ボケ専門のロクデナシである。

兄貴分の「隠し薬の槍杉」という者に言われ賭場に来る客を探していたのである。鹿島一家という一家は、大前田栄五郎が急ぎ旅で名古屋にいた時に、縄張りを広げて、城主徳川慶恕のときに、名古屋城の火災が起きて栄五郎が、子分千人を引き連れて消火に努め名古屋城を救った褒美で、関東八州取締役に、栄五郎を捕縛しない様に、幕府を通じて話をつけた時に、栄五郎が上州へ帰るに付いて縄張りを鹿島の足平一に譲った一家である。

権造が尊信する栄五郎の過去を知らない訳はない。

「兄いーよ、ちょっと聞きてーが、鹿島一家というのは何処にあるんだ

「なんだって鹿島一家だって、鹿島一家はオイラのいる一家だぜよ」

「そうかい。そうかい。親方の鹿島の足平一さんは、元気かね?」

駆け落ちの杉は、自分の所の親分を足平さんは元気かね?と聞く権造に渡世人としての貫禄を感じた。

(顔の長いのもそうだが、このヤバサは半端ではねー、きっと名のある親方だろう・・・)

権造に対する態度ががらりと変わった。

「親方。家には、オイラが案内いたします。元気な親分とお会いになってください」

親方と呼ばれた権造は、気分良く駆け落ちの杉の言うことに従った。

だが、熱田の神社で賭場が、立つているということが気になっていたから、鹿島の足平一の盆なら、ワシには如何様はしないと考えて、先ずは熱田の森に行くことにした。

熱田神社は、皇室の三種の神器の一つ「草薙の剣」が祀られている所である。だから、参拝人も半場ではない。

駆け落ちの杉に案内されて権造は、鹿島一家の賭場に来た。筵で囲った賭場に入ると博打を真剣にうつ者の気が権造を包み込んだ。

(いいなー、この雰囲気は、博打場をよく知っている者以外はわからねー)

権造が独りごとを呟いていると賭場の一番置くにある帳場から、顔色の真っ黒な肝臓を患っているような、カバに似た顔の鹿島の足平一が立って権造の傍に来た。

「文殊院一家の兜山の権造さんじゃねぇーかい。おらーお宅に、居る足平とは双子の兄弟の足平一だよ。以前、大前田のとっさんと、武州に行ったときに、俺にスケを紹介してくれたじゃねーか。ほら鉢形の薬問屋のお上とか言う相撲取りみたいに太った美千代とか言う女だよ。あの女は媚薬を使うから、見た目はどうしょうもねーが、夜の仕事はいい仕事をしているねー」

中島誠之助みたいな、口ッ振りで足平一は、いかにも親しそうに権造に話しかけた。

「そんなこともあったかい。内の足平の兄さんとは、コリャ初耳だ。まあ、うちもお宅も大前田の系統だから一つ宜しく頼んまっさ」

「権造さん。名古屋の女は良いよー、名古屋の女を抱いたら終わり(尾張」だ。他の女を抱きたくなくなる」

権造は足平一に、判らないように、にんまりとした。

(文殊院の足平は馬鹿野郎だけど,尾張の足平一はいい男だ。第一ワシが口に出す前に女の事を何とかしてくれそうだ・・・)

*次郎長に諭されてから、表面渡世人の前では女の事は言わない事にしていたが、足平一の方から、話を持ち出してくれたので権造は今夜を期待した。

「処で、権造さんよ。博打はやるのかい。見た通り客は一杯だから、無理をしないで、ゆっくり名古屋で遊んでゆけば良いよ」

「普通なら挨拶をして、罷り通らせて貰いアバヨをするのだが、足平一さんのところでは無視することが出来ないから、お言葉に甘えまして、羽を伸ばさせていただきますぜ」

足平一と言ってもレキットシタ博徒の親分である。客人を持て成す位の事は、できる器量を持っている。

(今夜は権造さんが、喜んでくれるような持て成しを、尾張の女でしてやろう・・・)

足平一は、「隠し薬の槍杉」と言う二名を持つ代貸を呼んでここの賭場を任せるように言いつけた。

「隠し薬の槍杉よ。俺には大事な客人が来たから、今日はこれから上手い物を食ったり、スケを紹介したりしなければならねーから、オメーが賭場を死守りしろ!」

「親分。判ったよ。権造さんは大事な客人だから、悔いが残らないように、持て成しておくんなせい」

「代貸よ。大事な客人に何かあったら文殊院の親方に申し訳が立たない。若い物を三人ばかり付けてくれ」

「へいっ、それじゃー、大塚山の和助・中村の新三・三角の昭太郎をつけます。親分それで良いでしょうか」

「和助は、寝たきりで車椅子で動いているそうじゃねーか、そんな者を付けて如何するんだ」

「和助は気付け薬が好きだから、俺が隠し持っている朝鮮朝顔から、抽出した気付け薬を飲ませれば、一発で元気になり、車椅子なんか要りませんや」

(おいっ、おい、この頃、車椅子なんかあるのかよ。ワシの頭脳が悪いからといって、馬鹿にしやがって勝手な事を言っているのか。それならワシだって考えがある・・・)

考えがあるといっても高が権造の自在性が女の事意外ない頭脳である。

権造は僻みも強く、直ぐに感違いをして、ヘットに来る性質だから、困ったものである。

然し、足平一が、スケを紹介してくれるといっているから、耐え難きを耐え・忍びがたきを忍んだ。

(足平一さんの若い衆の事だ。ワシには考えたら関係がねーよ・・・)

「足平一さん。ワシはボディガードなどつけなくても、前世が甲賀の万空(まんから)と言う忍びの者だったから、己を守る術は心得ている。最近は出入りがねーから、この腕が泣いているのさ」

権造は右手で左腕をポンと叩いた。

「それじゃー、権造さん。尾張の中村遊郭へレッツゴーだぜ」

権造は、足平一が英語を使ったので、少しばかり驚いた。脳タリンの権造だって英語は出来る。その事は権造が、密かに自負している事である。どうして権造が、英語を話せるかというと、若い頃、権造は大前田栄五郎の警備で六本木にいた事があり、その時に、外人と仲良くなり、青い目の女まで紹介して貰っていたのである。

Then let's go to the place that a woman waits for

権造の本物の英語で足平一は、魂消させる心算でいたが、反対に魂消てしまった。

「権造さんよ。あんたは偉い!日本中の渡世人で英語が喋れるのは権造さんだけだ。オイラは、感動したよー、この足で中村に行き権造さんの英語で女郎を魂消させてやろうじゃねーか」

Very well. I will let a woman surprise

「もう良いよ。権造さん。オイラの頭が可笑しくなってしまうぜ」

「うっ、は、は、は、は、はー、足平一さん。ワシの凄い事が判ったかい。マダマダ凄い所はあるが、又後でねー」

結局は中村遊郭へは権造と足平一と車椅子の和助を連れて行く事にした。

「足平一さん。中村にはマブイスケが居るのだろうなー」

「遊郭だから、近畿地方で選ばれた飛びぬけの美人ばかりだよ」

「そうかい。そうかい。足平一さん。今夜は思い切り羽を伸ばしたい。豊川では弧芸者と言う変な女に騙された。まさか中村遊郭には猿芸者などと言う漫画みたいな女はいないだろうな」

「権造さん。スケコマシで有名なオイラの弟を知っているだろう。その」弟が来て』中村遊郭へ連れて行ったら、翌朝、武州には帰りたくねぇーと駄々をこねた位だ」

未だ見ない中村遊郭の美人を心に描き権造の胸はドキドキして、高鳴るばかりであった。

足平一と』歩きながら女の話をしている内に、中村遊郭へ着いた。眼を上げるとそこには「横須賀屋」という女郎屋があった。

「ここに、しようよ権造さん」

権造の胸の高まりは最高潮に達した。そして足平一と「横須賀屋」へ一歩踏む込んだ時である。

*「ちょっと待って!ちょっと待って!プレイパック!プレイパック!」

後ろから隠し薬の槍杉が、大声で二人が「横須賀屋」へ入るのを止めた。

足平一が、肝臓が悪くて真っ黒な色をして、カバのような顔をして槍杉に、怒りを露にした。

「この野郎。これから大事な権造さんを招待し、オイラも一諸、にスケを抱こうと考えていたのだ。オイラの女好きは、槍杉オメーだって女嫌いじゃねーから、知っているだろう」

権造は自分ほど貫禄がある渡世人が来て、これから、接待であるというのにプレイバック!とは、何が起きたのだろうとノータリンの頭を捻った。

「槍杉!一体何が起きたのだ!!」

権造と足平一が同時に声をそろえて怒鳴った。

「槍杉オメーは嘘をつくから、信用が出来ない」

「親分、ちょっと待ってくんない。朝鮮朝顔から、抽出した「元気薬」を一服飲んで頭をすっきりさせて、理路整然と説明しますから」

槍杉は急いで懐から、薬袋を取りだすと、水も飲まないで、口中に入れた。直ぐに眼玉をまん丸にして、廻らない呂律を廻らせた。

「虎賢一家が、殴りこみに来た。虎賢の親方が、俺の舎弟の駆け落ちの杉に、銭を二分貸したのだが、駆け落ちの杉が、利息の三文を持ってゆかないといって怒ってきた訳ですさ」

虎賢一家の親方は、名古屋で一番のケチで有名な男である。駆け落ちの杉に、二分貸して、三文の利息を持ってこないから、怒り心頭に発した。

だが、子分がドモリの口関しか居ないので、近所で、道普請をしていた土方の三人に、一文ずずつくれて、それを引き連れ鹿島一家に、殴りこんできたのである。

権造と足平一はこれから「横須賀屋」で、ジュニアが動かなくなるまで女郎を相手にしようと考えていたところである。狂ったように頭にきた。

「足平一さんよ。ワシは助っ人するぜ。虎賢だか何だかわからねぇー屋郎をタタッキ斬ってから、レットツーゴー「横須賀屋」だぜ!」

車椅子の和助に、槍杉が元気薬を飲ませると和助はすくっと立ち上がった。

前世が忍者であった権造は、足が速い先頭に立つと真直ぐに、足平一の鹿島一家に向った。

鹿島一家が全員熱田神社の賭場に行っているのを知ってか、虎賢一家は鹿島一家の家の中に入り、スコップと鶴嘴を振り上げて、家に中を滅茶苦茶にしていた。

その様子を見た足平一と槍杉は、大声で叫んだ。

「テメーら全員殺してやるから、覚悟しろ!」

権造を含めて全員で虎賢一家の土方と親方を目掛けて、長ドスを振り上げた。山本リンダが見たら、こう言ったろう。

「もう、どうにも止まらない。へいっ」

権造は虎賢の前に立つと脳天から、股まで唐竹割に一発でしてしまった。

「ギャー、二分返せー」

これが虎賢の断末魔となった。他の土方は足平一と槍杉に、腕と足を切り取られて玄関の土間でドジ狂っている。

「足平一さん。コイツラを家の外に、蹴り転がして、ワシが地獄へ送ってやった虎賢のけち野郎は、死ねば仏だから、城下外れの人通りが少ない道端に、墓碑を薪かなんかで作ってやり、南無阿弥陀佛と子分に書かせて懇ろに葬ってやってくれ」

「判った権造さん。おいっ、槍杉・舎弟の駆け落ちの杉と二人で、この後始末を権造さんが言う通り、懇ろに葬ってやってくれ」

*槍杉は、奥の部屋から、筵を丸めて持ってくると日の本一ケチな、虎賢一家の親分の縦二つに、斬られた遺体を茣蓙を広げて上に載せた。

(それにしても、権造親方はスゲー渡世人だ。長ドスを持たせたら、ニッコリ笑って人を斬る。格好が良いなー、人相が悪いからそれだけに、凄みがある。渡世人は斯くあるべしだ・・・)

槍杉と杉の二人で、虎賢の遺体を筵に乗せる時、廻り中・血の海になっていて、二人は泥濘を歩いているような気持ちになった。傍には酒を呑むときに、染みる五臓六腑が、塊になってあった。

(あれっ、これは俺が、好く行くモツ焼き屋にあるモツと同じだ。うまそうだなー)

槍杉と杉は食いシンボーで、酒飲みだから、斬られた人の内臓を見ても、モツ焼きに見えてしまう。こんな子分が居る足平一は、物事に動じない肝の据わった親分であるのがわかる。

渡世人にとって、出入りで負ければそれでは、一家を維持する事が出来ない。権造の凄腕で、難なく虎賢一家の土方を寄せ集めた殴りこみは、防ぐ事が出来た。

足平一、始め隠し薬の槍杉・駆け落ちの杉・車椅子の和助は、改めて権造の顔の怖さと、ドスを使う腕の確かさに驚愕した。

足平一は、ツクズク思った。

(オイラの一家に)権造さんのような怖い顔と腕に立つ子分が居たら、信長公の様にこの尾張から、オイラが天下を取る事が出来る。天下布武だぞ・・・・)

「おうっ、足平一さんよ。二人の杉に、遺体を懇ろに葬らして、俺たちは先に精進料理を食って、精進落しを中村遊郭で早くやろうよ」

足平一は、権造の言葉を聞くと、色グロなカバ顔の目じりを下げて、にんまりと笑った。

「レッゴーナカムラ」

足平一さん。アンタとは気が合いそうだ。ワシが旅から、武州に帰ったら、文殊院の親分に許可を貰って兄弟分の縁を結ぼうぜ」

こうして中村遊郭の「横須賀屋」に戻った二人は、近来稀に見る豪遊をした。

権造は、女郎をベッドじゃなくて、お布団の中に五人も導きプレイを堪能して、足平一は、付き合いでというが本当は、本人が希望して権造と同じく五人の女郎を相手にして、一晩中、弧軍奮闘して、言った。

「権造さん。五人を相手にするのじゃー、オリンピックだよ」

「足平一さん。アンタ未来の事が判るのかい。日本にオリンピックが開かれるのは、後百年近く未来の昭和の御世だ」

こうして、中村遊郭で、お互いに五人もの女郎を一挙に相手にした。権造と足平一は、翌日「横須賀屋」を出て、空を眺めながら同じ事を言った。

「今日のお天道様は五色に輝いている。何か起こったのかね?」