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実録 宮城刑務所の凶悪犯

新・翔  遊

六 天  舜

石井紘基刺殺事件

僕は戦闘服に身を包み街宣車に乗って、北領土返還や国体の護持・天皇崇拝を拡声器で、がなっている者は右翼ではないと思っている。

 右翼とは思想でも無く純粋な心の問題であると考えている。それは、日本の歴史を紐解きその検証に務めてこそ右翼とは何であるかが解るのである。

 まして、思想的裏付けも無く殺し屋として貴い人の命を奪った者に対しては、軽蔑の念を抱いている。

 それは僕が生れたこの国が大好きで日本人として、誇り以上ともいえる矜持を持っているからである。

 七工場に移って刑務所側と闘った件も明治大学の名誉教授である菊田幸一氏や社民党の福島瑞穂の御亭主で弁護士の海渡雄一氏が、民事裁判で勝訴をしたので、平穏無事な日々を送っていた頃の話である。

 七工場の雑役夫が、ハト(密書)を僕の手元に置いて言った。一応反則行為なので急いで作業台の下に隠した。

 昼食の休憩時間、前橋の今村組の樺沢に担当看守が、近くに来ないかどうかを見て貰いながら、小さく折ってあるハトを開いた。


 不躾失礼をいたします。自分は民主党の石井紘基を民族の敵であると確信して、仕留めました伊藤白水と申します。実は、自分が祖国の為に、こうして無期懲役を務めているのにも拘わらず三工場の国賊たちは自分を馬鹿にして、自分が何をしてきたか解っていないようなのです。今の右翼は行動の一つが出来ません。行動してこそ右翼ではないでしょうか。昭和の歴史を紐解くと血盟団事件や五・一五事件。二・二六事件皆、国を憂い国を愛し国の為に考えて行動蹶起したのです。そのような精神を忘れた同志たちに自分は事件で「喝」を入れたはずです。それでも行動しない同志たちに軽蔑の念を抱いているのです。

剰え、自分がいる三工場の者達は祖国が現在どのような状態になっているかも解らず、自分が歴史に永遠に残る人間である事も解らないのです。

六天さん。貴殿なら自分の行動の意義と目的そして成果を解って頂けると考えてこの様に失礼ながら手紙を書いているのです。お願いです。どうか自分が遣った事の重大さを工場の馬鹿どもに解らせ自分をもっと大事にするように話してください。


白水君からの手紙を見て僕はため息を出してしまった。ここにも無期という重圧から逃れず自分を英雄化している人物がいると・・・

「何ですか何かあったのですか」

山口組・宅見組で中野会攻撃の一陣を放った後藤君が僕に聞いた。

「僕は伊藤白水という男を知らない。後藤君知っていますか」

「例の民主党の石井紘基議員を刺した奴ですよ」

「どんな人間なの」

「どうしょうもない馬鹿ですよ。自分が石井議員を刺した英雄気取りで、新入で降りた時から胸を張り大きい面をして工場内を闊歩している野郎です。最初の内は一応皆、立ててやっていたのですが、その気になり過ぎて何にでも口を出し、上目目線で俺たちにも話をするようになってしまったので、皆、相手にしなくなりました」

「そうなの、そんな馬鹿では相手にしない方が良いだろう。僕も以前新聞で石井紘基刺殺の事件に付いては読んだ記憶がある。その時は、変質者の仕業であると思っていたのだよ」

「全く、白水はおかしい野郎です。工場で皆に相手にされなくなったら同じ懲役の反則行為を見張っていて、それを担当看守にチンコロ(密告)するのですから・・・」

「危ない男だね。これを読んでみて」

 僕は伊藤白水から来たハトを後藤君に見せた。読み終り後藤君は怒りを顔に表して言った。

「飛んでもねー野郎だ。こんなことは六天さんには関係がない。ハトも自分が如何に凄いかとしか書いてないです。白水だけは相手にしないでください」


 石井紘基刺殺事件を振り返ってみよう。

二〇〇二年十月二十五日十時三十五分ごろ、民主党の石井紘基衆議院議員(六十一)東京都世田谷区代沢一の自宅前で男に刃物で刺され、目黒区内の病院に運ばれたが死亡した。男は現場から徒歩で逃走、警視庁捜査一課と公安部は殺人事件として北沢署に捜査本部を設置捜査に乗り出した。

 調べによると、男は無言で石井議員に近づき、左胸の上部一カ所を柳刃包丁のような刃物で刺した。年齢五十歳位、身長一メートル七十、グレーのジャンバー姿で、頭にはバンダナのような者を巻いていた。男は京王井の頭線池の上駅方向に逃走、現場近くでは、犯行に使われたとみられる刃渡り三十センチの包丁が見つかった。

これが事件の概要であるが、この事件は奥が深いのである。

 伊藤白水がいた工場の担当看守が、伊藤に聞いた事件の裏にあるものを僕に話したのである。この担当看守の名は明かす事が出来ないが、白水が防衛省出入りの政商山田洋行から、人を介して五千万円で殺しを請け負ったのである。白水の誤算は無期懲役を受けたことで、石井議員を殺した代償としてもらうことに成っている(刑務所を出所したら支払うということ)五千万円は普通の務め方では到底出所する事が出来ない無期懲役である。幾ら金が必要であるとしても、刑務所の中からその人間に請求すれば、事件の裏側がばれてしまうから請求も出来ず。逮捕をされた時も所持金は殆どなかったとの事である。

この事件は山田洋行の防衛官僚との癒着・内閣機密費の闇・厚生省の年金流用容疑を調査していた石井紘基議員が邪魔で仕方が無いので山田洋行関係者が、某組織幹部に依頼して、某組織幹部が何故、石井議員を殺さなければならないかということを白水に伝えずに金で釣り犯行に及ばせたと言うのが真実であるようだ。

 憶測であるが、白水に石井議員を殺すように命令をした者は、石井議員殺しを一億円で請け負ったのではないだろうか。

 白水はこの人物に預けてある殺しの報酬五千万円を使える日を唯一の希望として、服役をしているが、元々、右翼のことなど全く解らない人間である。無期刑が簡単に仮釈放にならない事は知らずに宮城に押送されて務めている。反則をして独房に入ると考える時間は十分にある。頭が悪い者でも自分が現在置かれた立場を考えれば、夢のついえたことは明白であることが自覚できる。


 だからこそ白水は天に唾を吐くような唾棄すべき人間に成り下がり、刑務所側の犬となり、似非右翼だから右翼としての誇りは、もともと無いのであるが、人間としての誇りまで捨ててしまったのだろう。

 石井紘基議員は正義感が強い日本にはなくてはならない人物であった。政官財の癒着や国民にとって政官財が、背任行為をしているとみれば躊躇うことなく追及をして国会で問題にした。偉いのは昔いた国会の爆弾男と言われた議員と違い。私欲が無かった。調査をする相手の弱みを掴むのだから、弱みを発表されたくない者は、金を出して解決をしようと考えるところだが、石井議員は絶対に金を受け取らずに不正があった情報を交換条件にしたのである。だから、石井議員を殺させた陰の人物は「金で転ばない」石井議員に相当参っていたのである「金で転ばない」となると次は、如何したら好いのだろう。自分の政治生命や官僚としてのキャリアを傷つけ、財界人として、社会的信用を喪失させるものは、死の他無かったのである。石井議員を死なせた者はもうこの世にはいるかいないか解らないが、貴い人の命を奪ったと言う事実は何時までも己の心の奥底に滓となり残っている筈である。石井議員を殺す事を命じた時。貴男は人間として石井議員に負けたのである。

 桶川ストーカー事件の章でも書いたが、大事件の真実は大概、闇の中に葬られてしまう。表面で事件を起こした者は、シシリア島のマリオット若しくは、日本の傀儡子に操られる傀儡と同じであるという事を宮城刑務所に服役をして痛切に感じた。

 

 右翼は頭山満翁・内田良平翁・景山正治氏・赤尾敏氏・野村秋介氏の諸子が純粋に国を思い国を憂いた「吾身を殺し以て国を愛し抜いた」本物の右翼であるとしか僕には解らない。

又、右翼を名乗り政党と癒着して利権をあさり、挙句はアメリカのCIAのエージェントである事が五十年経過した現在、CIAの秘密文書が開示されて明らかになった児玉誉士夫などは、国賊としか言いようがない。ロッキード事件の時にマスコミの対応に活躍した太刀川秘書は、現在、児玉誉士夫の遺産である「東京スポーツ」「千歳国際カントリークラブ」のオーナーとして、財界のフィクサー的存在として暗躍している。

右翼の届け出は県の選挙管理委員会に届ければそれでその日から政治団体で右翼であると認められる。だから、ヤクザに成りきれず半場な者が、雨後の竹の子みたいに右翼を自称する。政治結社届け出のシステムも見直しをしたらどうだろうか。


伊藤白水は、似非右翼で殺し屋である。右翼の振りをして天下国家を論じるより、日本の国を憂いるより、自分自身を憂いなさい。




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