006




















名も無く野に咲く花


http://www.hannibal6.com/

アンチバランスの魅力




 


 僕が、孫のように思い可愛がっている娘に、まるでおとぎの国の不思議な森のハムスター姫のように、小首を傾げたくなる娘がいる。

ウェストが、細くバストが大きくヒップも形が良く、体のバランスが、非常に良い。顔は、丸くて目鼻立ちは小造りで、ハムスター家のお姫様と言い換えることも出きる。

 颯希に訊ねると、お店ではナンバーワンの人気者とのことで、歳は二十歳だから成人ではあるが、外見が子供でもあるように見えて何となく好奇心をそそるのであり、きっと、ロリコン趣味の人は悠子を好むだろう。

 生まれは、滋賀県で父親の転勤に従って群馬県に来た。

 父親は、男の子が生まれて欲しかったらしく悠子は九歳位までは、男の子の服装を着せられて育てられた。

 玩具も、機関車とかラジコンで操作のできるレースカーやヨットなどを買い与えられ男の子同様に育ってきた。

 小学校・中学校は、恥かしがりではあったが、ボランティア活動をしたりして、楽しい思い出ばかりであった。

 仲良しの男子は居た。手をつないで歩いたり、じゃれ合ったりしていたが、中学三年の太田市の金山・呑龍寺の染井吉野桜が散るころ、その同級生の男子が、好きで、好きで堪らなくなった。悠子の青春、初恋である。

 人を好きに成ることが、これほど、苦しいものと知り思い悩んだり、彼の気持ちを引こうとしてアイコンタクトをしたり、悠子なりのアピールをしたが、彼は、少しも気づいてくれなかった。

 恥ずかしがりの悠子は、決断して彼の自宅に行って告白をした。

「わたしは、貴方が好きです交際してください」

 彼の眼をじっと見つめながら、高鳴る鼓動を抑えて返事が返るのを待った。

「僕は、これから進学して、東大か早稲田に行きたい。だから悠子のことは、好きだだけど付き合うことはできない。勉強が、疎かになるとお母さんに怒られるよ」

 内気で恥ずかしがり屋の悠子は、勇気を出しての行動は目的を達することはできなかった。悠子の青春の蹉跌である。

 誰でも、経験することであったが悠子の心は、大きく傷ついて、人前に出るのも嫌になり無口になったのである。

 けれども、悠子は、初恋に敗れたが、青春に、負けずクラブ活動のバレーボールに熱中した。

 青春とは、無限の可能性を秘めて、逞しく美しく悲しいものである。

 レシーバーとして活躍して、群馬県中学校県大会まで進出したのである。

勿論、悠子の活躍があってのことで、地元は湧きかえった。

 大田高校に、進学してからもバレーボールは続けて、悠子のレシーバーとしての名は近隣に響いた。

 悠子は、初恋の痛手から回復したように見えたが、初恋を告白したことにより、拒否された心の痛手は、トラウマとなり心の奥底に、シコリとなり残っている事に悠子自身気づいては居なかった。

 


 高校を卒業してから、会社に務めたが、長くは続かなかった。

これも悠子の膨らみかけた胸を男性社員達が、目で追ったり、時には、声をかけてきたりと、嫌らしいことが多くあり、世の中の汚れた大人の世界を見てしまった気持ちがした。

 悠子の勤務する課で、忘年会があった時である。大田市内の居酒屋で飲んだ後、課長の内島隆行が送っていくと言い、遠慮する悠子を飲酒運転のまま、ラブホテルに連れ込もうとした。

悠子に騒がれ、内島が狼狽した隙に、悠子は車から逃げ出してラブホテルの近くの県道を泣きながらとぼとぼ歩いていた。

(会社で偉い人が欲情丸出しで、私を犯そうとした。会社も辞めようかしら)

 赤城おろしの吹く中、悠子は涙と鼻水を啜って家の方向にむかって一人歩いていた。

「どうかしたの?この寒い中一人で歩いて」

「何でもないです」

「何でもない訳ないでしょう。こんな夜中に女性が、一人で歩いていること自体。可笑しいわ。こちらにいらっしゃい。車に乗せて。送ってあげますから」

 颯希は、とっさに、判断して優しい言葉をかけてやり悠子が恐る恐る颯希の車に乗ると、項垂れている悠子の肩をゆっくり摩ってやった。

「お家はどこなの。送っていくから」

鼻を啜りながら、うつ向いていた悠子は小声で颯希に話した。

「太田ですけど寮に住んでいます。でも帰りたくない…」

「何があったのかはだいたい想像が付きます。とりあえず、私の家にきて休んだらいいでしよう」

「お願いします」

 これが颯希と悠子の出会いで、颯希の優しさと悠子を思う気持ちが、悠子には感じられて、颯希を信望するまでになり、颯希のデリバリーヘルスで働くようになるのである。

 普段は思いやりがあり優しい颯希も、仕事のことになると厳しく、礼儀作法は勿論、客の対応まで、客がこうに話したら、こう答えなさい。このような仕草をした時は、何を求めているのか良く考えて、こうしなさい。といった接客のセオリーを教えた。

 会社の課長が、部下である悠子をラブホテルに連れ込みたくなる気持ちが解るほど悠子の体はバランスが良く、それに反して、顔が子供のようで不思議なセックスアピールを醸し出している。

 僕としては、孫を見るような眼で悠子を見ていて、会うたびに頭を二・三度撫でてしまうのである。

 この、ハムスター家の姫には、将来の志を持ってそれに向かって進んでもらいたい。礼儀はしっかり心得ているし、人の気持ちを忖度して、動くことも出来るので、良いお嫁さんになるだろう。

 


   ドリフト娘その名は愛美

 


 レーシングカーで、後輪を横滑りさせて、カーブを切ることを競うのをドリフト競技と言うらしい。

愛美は、ドリフトに、嵌まっているらしくマイカーをオレンジ色にして、金の粒子まで混ぜて光らせている。

 二五歳にもなりドリフトにのめり込むのは、危険を覚悟してまで打ち込まなければ忘れられない程の心に、傷を受けたことがあるのではと思える。

 闊達で物怖じしない性格は、僕は好きで話を聞いていても僕の知らない世界のことを話してくれるので、若い世代のことを全く解らない僕は、愛美の話に興味津々である。

 五日前に、普段ほとんど夢を見ない僕が夢を見た。

淫夢といえるその夢は、愛美と行田市内のラブホテルに行って、まず露天風呂に入りじゃれ合いベッドルームが三室ある部屋の真ん中の部屋のベッドに、入りセックスを始めた。愛美の体は少し太めで、スレンダーな体が好みの僕としては、許容範囲といえる範疇ではあるが愛美は、体が弾力があり性器も締りが良く、僕がいってしまうのも時間がいらなかった。

「愛美、気持ちいいよ」と、小声で囁いた途端に夢から覚めたのである。

 こんな夢をこの年で見るのは、如何したものかと考え、僕もまだまだ女性に対しての興味を失ってないという自信と反面この年をして何てことだという悔恨の気持ちに支配されたのである。

 また、何で愛美なのか、一度セックスをしたことは有るが、それだからか、妻が急逝して五年、妻とのセックスは途絶えていた。シャロン・ストーンに似たフランス人女性とは、別離があって六年、僕には女性とはもう縁がないと考えていたのである。

 この年になり女性に興味を持つことは、煩悩がまだあり男性として、枯れたわけではないと変な自信を持った。

 愛美は、愛知県で生まれ、中学生で不良になり、何年も家に帰らず暴走族に入り車を、暴走させて青春の未知に対する不安を消し飛ばしていたという良くある青春時代である。

 子供から大人になる過渡期は、希望と不安と可能性に悩む時期であり、人を愛する楽しさ、苦しみ悲しみを覚え、いてもたってもいられなくなると、仲間を集め楽しいことを語り、時には悲しみを分かち合う。考えに詰まると車で走り、もやもやを消し飛ばす。青春とはそういうものである。

 愛美はこの頃のことは、教えてはくれない。

 最近、僕が付き合っている雑誌社が、ドリフトに興味を持ち、本に載せたいと言ってきたので紹介してやったが、愛美は取材を受けたいとのこと。

自分の熱中しているドリフトが、社会にあまり知られていないので、少しでも社会に知られたら良いと考えているのだろう。

 愛美が、デリバリーヘルスの職を選んだのも、颯希というママの人柄に惹かれてのことであり、颯希は愛美の性格をよく理解している。

 愛美も颯希が好きで、『颯希ママ』と懐いている。

 人としての寂しさ悲しみを知った者同士の紐帯は固い。颯希と愛美の間柄も信頼に満ちている。

 ドリフトで愛美が事故を起こした時は随分。狼狽して電話をかけてきた。

「愛美がドリフトで事故を起こしてしまいました。怪我をしたとのことなので心配で心配で…」

 まるで、実の母親が娘を心配するように、愛美の事故のことを慮っているのには、僕は心を打たれ、颯希はなんて心根の優しい人なのかと必要以上に惹かれるものを覚えた。

「怪我の状態が解かったら教えてください。僕も愛美のことは心配だから」

「わかりましたら、すぐ連絡をします」

 颯希は、忙しそうに電話を切った。

 その日のうちに、愛美は腕を捻ったので、大分痛がって居るとの連絡が颯希からあった。

 危険は承知で遣っているのだから仕方がないが、あのような事をしていたら、何れ事故を起こすのではと思っていた。

 僕は心配であったが愛美にはドリフトという危険なレースを止めてもらいたいという考えから、見舞いに行きたかったが、行かずに我慢した。

 暫くして、颯希と悠子そして愛美が僕の家に、手土産を持って訪れ、キッチンに入り、まず掃除をしてくれた。その後に、持参した材料で料理を作ってくれて、一諸に食べながら、和やかなひと時ときを過ごした。

「このリビングから眺める池は素敵ですね。ほら愛美見てごらん鴨があんなに沢山泳いでいるよ」

「ママ、色々な鴨がいますね、あの小さいのはなんていう鴨なの?」

 愛美は、僕に首を傾げながら聞いたが、僕自身鴨の種類など分からない。

「そこの書棚に鳥類図鑑があるから、調べてみたらよい」

 愛美と悠子は、鳥類図鑑を取り出しページを捲り、池の鴨と見比べ「いたいた、あれが真鴨なんだ、こっちのは、首が緑色だから何て言うのかな?」等と子供のようにはしゃいで、図鑑と池に浮かぶ数十羽の鴨とを見比べていた。

 颯希は、二人が子供のように喜ぶ姿を見て、母親のように微笑み、僕に向かって頷いた。

 僕も、何となく気持ちが落ち着いて、颯希が僕の妻で、愛美と悠子が僕の娘であるような気がした。

 ずっと、居て貰いたいと思ったが、僕のそんな気持ちを他所に、颯希たちは、仕事があるようで、急いで帰っていった。

 模擬家族的ではあるが、赤の他人との一時でもこの様にして、安らぎ癒されるのは、颯希の、口数こそ少ないが、温かみのある雰囲気から来ているものであり、愛美と悠子の屈託のない笑顔も、僕に対しての童心のような気持ちからであると気づいたのは帰った後であった。

 


 


htthttp://www.hannibal6.com/p:/http://www.hannibal6.com//www.hannibal6.com/ http:/http://www.hannibal6.com//www.hannibal6.com/